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【筋肉博士の直伝】ロコモ予防の下半身筋トレ

古林 茂樹
Written by 古林 茂樹

皆さん、こんにちは。 今日のテーマは”筋トレ”についてですが、その前に突然の皆さんの足腰チェックでしたが、心当たりの症状はいくつか ありましたか?

この ”ロコチェック”とは、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の通称です。 「立つ」「歩く」といった機能(移動機能)が低下している状態のことをいいます。

エレベーターや車を使う便利な現代社会において、人類は足腰を使う機会が少なくなっていますね。

そしてこれは何も中高齢者だけのチェックではなく全世代の方々に注意が必要とされる貴重なチェックなんです。

健康寿命を延ばすための筋トレ法とその効果

健康寿命を延ばし、いつまでも自立した生活を送るためにも、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動だけでなく、「筋トレ」も重要であることが最近改めて認識されてきています。

東京大学大学院教授で“筋肉博士”こと石井直方さんは、「寝たきりにならないためには、40~50代のうちから筋肉量を増やす意識で運動することが大切」と言っていました。

そこで石井さんの講演会で聞いた、筋トレの効果と、具体的な下半身筋トレの方法を紹介させていただきたいと、そしてそれが上記の”ロコチェック” でも少しでも,気になられた方々にご参考になれば幸いです。

筋トレの重要性が高まっている

最近、「健康寿命」という言葉をよく聞きますね。これは人が要支援・要介護の状態になることなく、自立して生きていける期間と言われています。

健康寿命を延ばすためには、「運動」が重要であることがよく知られており、特に、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動が健康にいいと思っている人はほとんどかと思います。

ただ、実は有酸素運動だけでは不十分であり、「筋トレ」も重要であることが最近になって改めて認識されてきました。

そこで今回の「テーマ」では、いつまでも自分の足で歩き、寝たきりを防ぐための筋トレ法などを講演会の要旨、その他関連記事からピックアップして紹介させていただきます。

寝たきり、認知症の予防に筋トレが重要である理由

厚生労働省の2019年のデータでは、日本人の平均寿命は男性が81.25歳、女性が87.32歳だ。

しかし、生活に支障なく暮らせる健康寿命は男性が72.14歳、女性が74.79歳 (但し2016年の統計から)。その差は男性9.11年、女性12.53年になる。

たとえ長生きできたとしても、要支援・要介護の状態で過ごす期間はなるべく短くしたいと誰もが思うもの。

いつまでもはつらつとした生活を送るためには、どうすればいいのだろうか?

石井直方さんは、「支援や介護が必要な状態にならないためには、40~50代のうちから筋肉量を増やす意識で運動することが大切。

筋トレで要介護になる原因の7割を予防できる可能性があるのです」と言っています。

そして、「要介護になってしまう原因を分析すると、一番割合が高いのが認知症との事。

次が脳卒中で、3番目が高齢による衰弱です。そして4番目が骨折・転倒、5番目が関節疾患になります。

つまり3番目の一部から5番目までを合わせた、筋肉や関節、骨といった『運動器の機能低下』がなんと全体の約30%になるのです」


平成28年国民生活基礎調査より

そして石井さんによると、要介護の原因の1番目である「認知症」と2番目である「脳卒中」も、筋トレで予防できる可能性があり、すべてを合わせると7割近くで筋肉を増やすことが対策になるのだという。

サルコペニアが原因でロコモ、メタボ、認知症に!?

運動器の機能低下に大いに関係しているのが、筋肉量の減少。男女に関係なく、筋肉量は20代をピークにして、加齢とともに徐々に減っていく。

これは「サルコペニア」という誰にでもある現象。さらに加齢が進み、筋肉量とともに筋力も減少すると、身体機能が衰えてくると。

サルコペニアと密接に関係しているのが「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」、通称ロコモです。

ロコモは、筋肉を含む、骨や関節、椎間板といった運動器に障害が起きて、「立つ」や「歩く」といった基本的な機能が衰えること。

ロコモになると毎日の活動量が減り、さらに筋肉が衰えてしまう恐れもある。

サルコペニア、ロコモ、メタボ、認知症の関係

中高年になり、加齢によって筋肉量が減るのは仕方がない。しかし、「ただ筋肉が減るのに任せていると、サルコペニアやロコモだけでなく、『メタボリックシンドローム(メタボ)』や『認知症』にもつながる」と石井さんは警告する。

それでは、“諸悪の根源”であるサルコペニアには、どのような対策をとればいいのだろうか。

必要なのはやはり筋トレとの事。「筋肉量を保つには、筋肉細胞に対しての刺激が必要です。つまり、適切なトレーニングで筋肉を太くし、食生活にも気を付けながら、メタボも解消していくことが健康寿命を延ばすことになります

筋肉は何歳からでも増やせる!

それでは、筋肉量を維持するためには、どのような運動やトレーニングを行うといいのだろうか?

「ウォーキングなどの有酸素運動も、健康のためという視点ではもちろん大切です。しかし筋肉への刺激という部分では物足りない。やはり、筋トレが必要になります。

ただ、アスリートのような強度が高いトレーニングを行う必要はありません。高齢者でも適切なトレーニングによって、たとえ70代や80代でも筋肉を増やすことが可能です


高齢者でも適切に筋トレを行うと筋肉が太くなる。これは石井教授らが2013年に報告した例。3カ月で70代の高齢者の大腿四頭筋が太くなっていることが分かる。

筋トレというと、重たいダンベルや特別な器具を使ったものを思い浮かべるかもしれない。

しかし、誰でもできる簡単なものもたくさん存在している。そんな方法で毎日少しずつでも刺激していれば、筋力と筋量の低下は防ぐことができる

また、70~80代でもトレーニングによって筋肉を太くすることができるものの、40~50代から取り組んでいけばさらに効果が高まることが分かっている。将来のために今から始めることが重要なのだとの事。

健康寿命を延ばすためにまず鍛えるべきは「速筋」

寝たきりを防ぐには「速筋」を筋トレで鍛えて太くしよう!

人体には約650以上もの筋肉があるといわれている。だが、スポーツやトレーニングをするとき以外、普段の生活の中でその存在を意識することはあまりない。

「筋肉は、体を動かすための運動器であり、車で言えばエンジンです。筋肉がなければ、しゃべることもできませんし、物を食べることも、極端に言えば、呼吸もできません。

体の中にある臓器のうち消化管や血管の壁は『平滑筋』という筋肉でできています。じっとしていても、心臓の『心筋』は拍動を続けて血液を送り出しています」

一般的に「筋肉」と言うと、我々がイメージするのは体形を形作る「骨格筋」だ。これが主に、体を動かし、移動させるという役割を担っている。また、骨格筋は骨に付着していることも特徴です。

筋肉の種類

そして、筋トレによって鍛えられるのもこの骨格筋だ。しかも、骨格筋は大きく「速筋」「遅筋」に分けられるのだが、健康寿命を延ばすために意識してまず鍛えるべきなのは速筋のほうなのだ。

骨格筋のうち、白い「速筋」は瞬発力に優れ、大きなパワーを発揮できる。一方、赤い「遅筋」は、持久力に優れ、低負荷の運動を長い時間続けることが得意だ。

速筋は、筋トレで負荷をかけると太くすることができる。それに対し遅筋は、ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動で鍛えられ、脂肪を燃焼することは可能だが、鍛えてもあまり太くならない。

骨格筋には大きく分けて「速筋」と「遅筋」がある

「健康のためには、脂肪を燃焼させやすい遅筋を活用することが重要だという“信仰”がありますが、それだけでは不十分なのです。

転倒して骨折につながるような事故は、転びかけたときにとっさにブレーキをかけたり、体を支えたりする速筋がなければ防げません。つまり、速筋が減っているからこそ要介護につながる事故が起きるともいえます」

筋肉はなぜ使わないと細くなる?

それではなぜ、筋肉は使っていないと細くなるのだろうか? 人によって多少の違いはあるが、成人男性の場合、体重の約40%は筋肉だといわれている。活発に体を動かすためには、大量のエネルギーが必要になる。

「筋肉が車のエンジンだとすると、ガソリンが十分にはない状況では、排気量が大きく燃費の悪いエンジンは不経済です。

体もこれと同じで、エネルギーが少ない状態、つまり栄養条件が悪い場合は、エネルギーを大量に消費する筋肉は不経済なので、これらを真っ先に細くしてしまうという機能があるのです」

これは、「体たんぱく質分解」というものだ。筋肉のエネルギー消費を減らすと同時に、たんぱく質からエネルギーを作り出し、それを脳や心臓など、ほかの臓器へ回して、生命維持のために機能させるようになる。

「不活動や不活発、つまり使わないことで筋肉が減ってしまうことを『廃用性萎縮』と言います。その状態は遅筋のほうがなりやすい。

つまり遅筋は、日常的によく使うことがデフォルトで、逆に言うと日常的に使っていれば維持できます。

一方、40代を過ぎると、速筋の数が自然と減ってきてしまいます」

加齢により速筋の数が減ると、代わりに遅筋の数が増えてしまう。その詳しい仕組みはまだ分かっていないらしいです。そのため、速筋の割合が減ってくる中年期のころから、速筋を鍛えて減らないようにしておくことが理想的だ

下半身を効率的に鍛える「スロートレーニング」

下半身の筋肉を「スロトレ」で鍛えていつまでも健康に歩く!

転倒して骨折につながるような事故を防ぐためには、速筋を鍛える必要がある。では、体のどの部位の筋肉から鍛えていけばいいのだろうか。

「まず、殿部から下肢、つまり下半身を鍛えるといいでしょう。この部位の筋肉群は、加齢による影響で落ちやすいという特徴があります

日常生活においても、立つ、歩くといった基本動作で重要な働きを担う部分ですから、健康寿命を延ばすことにつながります。

また、人体の筋肉量の半分以上が下半身に集中していますから、全体として効率よく筋肉を増やすことができるのです」

どんなトレーニングで下半身を鍛えればいいのかという点については、「基本的な考え方としては、自分に合っていて長く続けられるものがいい」と石井さんは言っています。

ただ、これまで筋トレはおろか、あまり運動したことがない人にとっては、そもそもどのようなトレーニングが自分に向いているのか分からないだろう。

そこで、ジムなどに行く必要がなく、手軽に下半身全体を鍛えられるトレーニングとして勧められるのが、「スクワット」だ。石井さんはスクワットこそ、“キング・オブ・エクササイズ” だという。

スクワットにもいろいろと種類がある。初心者なら、「ヒンズースクワット」のように、重りなどを持たず、自分の体重(自重)だけを負荷としたものが向いている。ただし、筋肉を効率よく肥大させるという観点からは、負荷が足りない。

自重を使ったスクワットだと負荷が足りないとはいえ、普段あまり運動をしない、あるいは運動量が足りていない人が、いきなりバーベルを担ぎながらスクワットをするわけにもいかない。

そこで「スロートレーニング」(スロトレ)という方法によるスクワットが有効になってくる。

スロトレでは、ゆっくりとした動作で筋肉を緊張させ続けて、トレーニングを行うものだ。これにより血流が阻害され、筋肉への酸素供給が滞る。すると酸素が少なくても働くことができる速筋が運動に使われるようになる。

通常のスクワットとスロトレのスクワットの違い

通常のスクワット(左)は屈伸を繰り返しながらポンプのように血液を送り出すので、血流もスムーズ。スロトレのスクワットは、動きを止めず、立ちきらないまま、筋肉に力を入れ続ける。これにより血管が圧迫されるので、血流が制限を受け、筋肉の中が酸素不足になる

いわば、わざと筋肉が疲れやすい動作でトレーニングを行うという工夫によって、筋肉内の環境を悪化させて脳をだまし、筋肥大を促進するという方法だ。「スロトレのスクワットを10回やれば、普通の方なら筋肉がパンパンに張ってきますよ」と石井さんは言う。

スロトレで行うスクワットは、動きを止めないことがコツ。3秒かけて沈み込み、3秒かけて立ち上がるのが目安で、10回ほど繰り返そう。最もしゃがんだ状態で1秒間静止するとさらに効果的だ。

「スロトレも続けていくと筋力がついて行きます。すると同じ負荷で繰り返していたのでは、筋肉に対して十分な刺激にならなくなるのです。

その場合、回数を増やしていくという方法もありますが、1~2kg程度のダンベルや2リットルのペットボトルなどを持ってやってみるのもいいでしょう」

トレーニングの頻度はどうだろう。「理想は週に2回です。しかし、週1回でもいいので、まずは始めてみましょう」。

速筋は日常ではあまり使わないと言ったが、例外もある。階段や坂道、登山の“下り”では速筋が刺激されるのだ。スポーツでは、テニスのようなストップ・アンド・ターンを繰り返したり、少しジャンプなどが入ったりするスポーツがお勧めだ。

40代半ばになったら、速筋を意識してトレーニングしたり、日常生活を送ったりするようにしたい。

それが、将来の健康寿命を延ばす重要なポイントとなるのだ。体が衰え、運動がつらいと感じる人は、まずスロトレによって筋力を回復するところから始めましょう。

最後に, この記事と大変関連のあります “春です! 足腰を鍛えましょう” も併せて一読どうぞ!

About the author

古林 茂樹

古林 茂樹

1946年(昭和21年9月16日)、長野県生まれ、紆余曲折の末、古希を迎えた70歳からbloggerとなり、現在ちょうど4年目(Sept.30,2020)だが、いまだ試行錯誤の毎日、だが、ヤリガイがあり、縄跳び、swimming, & ワインと共に楽しく、happyな毎日です。
I'v lived a life full of ups and downs, and turns and twists, however, I'm happy.